信用倍率の高い・低いは銘柄選定に重要?目安や基準とは?
信用倍率は、将来の株価の値動きを予想するのに役立つ指標の一つです。
信用倍率の値が「1」よりも高ければ信用買い残高の方が多く、「1」よりも低ければ信用売り残高の方が多いことになります。
この信用倍率は投資においてどのように役立つのでしょうか。当記事では、信用倍率とは何か、実践での活用法など、初心者にも分かりやすく解説します。
信用倍率とは
株式投資には、証券会社から現金等を借りて、それを元手に株式を売買する「信用取引」があります。
信用倍率とは、信用買い残高が信用売り残高の何倍かを示したものであり、「信用買い残高 ÷ 信用売り残高」で求めることが出来ます。信用買い残高は、信用取引で「買い」を行い、まだ返済売りを行っていない株数のことであり、信用売り残高は、信用取引で「売り(空売り)」を行い、まだ買い戻しを行っていない株数のことを言います。
信用倍率の値が1よりも高ければ、信用買い残高の方が多く、1よりも低ければ信用売り残高の方が多いということになります。
例えば、信用買い残高が10万株で、信用売り残高が5万株の場合、信用倍率は「2倍」となります。信用買い残高が5万株で、信用売り残高が10万株の場合、信用倍率は「0.5倍」となります。
信用倍率から何が分かる?
信用買いは借金してまで買いたいということです。そのため信用倍率が高いということは、株価が上がった方が利益を得られる投資家が多いということですので、今後株価が上がると考えている投資家が多いことになります。反対に、信用倍率が低いということは、株価が下がった方が利益を得られる投資家が多いということですので、今後株価が下がると考えている投資家が多いことになります。
このように信用倍率を見ることで、他の投資家が株価の値動きをどう予測しているのかを知ることができます。
ただし、注意しなければならない点があります。
制度信用取引では、原則として6ヵ月以内に反対売買によって決済をしなければなりません。
また、信用取引は保証金を証券会社に預けて取引をしますが、株価が大きく下落するなどして、各証券会社に定められている最低保証金維持率を割り込んでしまうと、追加の保証金を入金しなければなりません。しかし期限までに保証金の入金がされない場合、強制的に反対売買が執行されてしまいます。
そのため、信用倍率が1よりも高い(信用買い残高の方が多い)場合、将来的に返済売りを行う投資家がたくさんいるということになります。つまり、信用倍率が高いほど、将来の「売り」圧力が高まり、株価の上値を抑えたり株価下落の要因となります。
反対に、信用倍率が1よりも低い(信用売り残高の方が多い)場合、将来的に買い戻しを行う投資家がたくさんいることになります。つまり、信用倍率が小さいほど、将来の「買い」圧力が高まり、株価の下支えとなったり株価上昇の要因となります。
信用倍率を見る際には、こうした側面もしっかりと考慮する必要があります。
信用倍率の基準・目安は?
信用倍率は「1倍」を基準値としており、信用倍率1倍は、信用買い残高と信用売り残高が同じであることを表しています。
一般的には、信用買い残高の方が多くなる傾向にあるため、信用倍率は1倍以上になる場合がほとんどです。
そのため、「信用倍率が1倍よりも高い=過熱感がある」というわけではありません。
また、信用倍率が1倍よりも小さいからといって、必ずしも「買い」というわけではありません。
信用倍率の水準は、業種によっても異なりますし、企業の業績などによっても異なってきます。
例えば、業績悪化が続き、将来的にもさらなる業績下方修正の懸念がある銘柄の場合は、たとえ信用倍率が1よりも小さくても、「買い」と判断することは出来ません。反対に、好業績が続き、将来的にもさらなる業績上方修正が期待できるような銘柄の場合は、信用倍率が非常に高い場合でも、「買い」と判断することが出来ます。
そのため、信用倍率の目安というものは存在しません。あくまでも参考指標の1つとして利用するのが良いでしょう。
信用倍率が高いと危険?低いのはチャンス?
信用倍率が高いということは、将来的に株式を売却する予定の投資家がたくさんいるということであり、信用倍率が低いということは、将来的に株式を買い戻す予定の投資家がたくさんいるということです。
つまり、信用倍率が高いほど、将来の「売り」圧力が高まり、株価下落のリスクが増えると言えます。反対に信用倍率が小さいほど、将来の「買い」圧力が高まり、株価上昇のチャンスが増えると言えます。
しかし、「信用倍率が高いから株価が下がる」、「信用倍率が低いから株価が上がる」とは一概には言えません。
基本的に、信用倍率が高いという理由だけで株価が下がることはありませんし、信用倍率が低いという理由だけで株価が上がることはありません。
何か悪材料や好材料をきっかけに株価が動いた際に、信用買い残高や信用売り残高が燃料となり、連鎖的に株価の動きを加速させる可能性があると考えるのが正しいと言えるでしょう。
信用倍率はどこで確認できる?
信用倍率は、各証券口座の銘柄詳細ページにて確認することが出来ます。
また、Yahoo!ファイナンスなどの銘柄情報サイトでは、信用倍率下位ランキングなどを見ることも出来ます。
信用倍率だけを見て取引をしないこと
信用倍率は、将来の株価の値動きの傾向を見るのに有効な指標ですが、信用倍率だけを見て取引をしないようにしましょう。
信用倍率が高いから、あるいは低いからという理由だけで株価が動くことはありません。あくまでも株価を動かすのは企業の業績やニュース、市場の変化などです。
信用倍率だけを鵜呑みにするのではなく、必ず他の指標と組み合わせて判断するようにしましょう。
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