空売り銘柄を見つけるためのスクリーニング条件とは
相場の上昇局面では、現物買いで利益を出すことが可能ですが、相場の下落局面では、現物買いだけで利益を出すことは難しいと言えます。
しかし空売りをすることで、相場の下落局面においても利益を出すことが可能になります。また空売りは、株価が上昇するか下落するか分からないような局面で、リスクを抑えるための方法としても有効です。
空売りは株価が上昇すると損失が発生してしまうので、空売りに適した銘柄を見極める必要があります。空売りに適した銘柄は、各証券会社などが提供するスクリーニング機能を利用することで探し出すことができます。
そこで当記事では、空売り候補銘柄を見つけるためのスクリーニング条件を紹介します。
空売り銘柄のスクリーニング条件
空売りに適した銘柄を見つけるためのスクリーニング条件を紹介します。
以下に紹介する条件をいくつか組み合わせて空売り銘柄を探しましょう。
信用倍率が高い
信用倍率が高い銘柄は空売りに適していると言えます。
信用倍率は「信用買い残÷信用売り残」で計算されます。値が1より大きければ、信用買い残が信用売り残よりも多いことを示しており、1より小さければ信用売り残が信用買い残より多いことを示しています。
信用買い残とは、信用買いをして返済売りが済んでいない未決済株式の残高のことを言います。反対に信用売り残とは、信用売り(空売り)をして買い戻しが済んでいない未決済株式の残高のことを言います。
信用取引は返済期限までに決済を行わなければならず、制度信用では返済期限が最長6ヵ月と決められているので、この期限までに反対売買をして決済しなければなりません。
つまり、信用倍率が高い(信用買い残が多い)銘柄というのは、将来の売り圧力が強いと判断することができ、処分売りが続いて株価が下落しやすいと捉えることができます。
スクリーニングをする際は10倍以上の数値を目安に指定するといいでしょう。
ただし、いくら信用倍率が高くても、信用買い残から信用売り残を差し引いた残高が、日々の出来高と比較して小さい場合は影響は少ないと判断されます。
例えば、『信用買い残100株・信用売り残10株』というケース、そして『信用買い残100万株・信用売り残10万株』というケースがあったとして、この場合どちらのケースも信用倍率は10倍になります。
信用買い残から信用売り残を差し引いた残高は、1つ目のケースでは90株、2つ目のケースでは90万株となります。
そしてどちらも日々の出来高が10万株だった場合、1つ目のケースのような差し引き90株の買い残があったとしてもほとんど影響はありませんが、2つ目のケースのように差し引き90万株の買い残は日々の出来高と比較してかなり大きな数字となるため、影響が大きいと言えます。
PERが高い
PERの数値が低いと株価が割安であると判断されるため、株価の下落リスクが低いと考えられ、空売りで大きな利益を得るのが難しいと言えます。
そのため、PERの低い銘柄よりも、PERの高い銘柄の方が空売りに適していると言えます。
スクリーニングをする際はPER30倍以上の数値を指定するといいでしょう。
ただしPERの高い銘柄は、株価の下落リスクが高い反面、企業の成長性が期待されている人気銘柄であり、今後も大きく株価が上昇していく可能性も秘めていることになるため、注意するようにしましょう。
PBRが高い
上記で紹介したPERは収益面から見た割安性を測る指標ですが、PBRは資産面から見た割安性を測る指標です。
PBRも低い方が割安だと判断されるため、PBRの高い銘柄の方が空売りに適していると言えます。
スクリーニングをする際はPBR3倍以上の数値を指定するといいでしょう。
ただし上記PERの時と同様に、成長が見込まれる人気の銘柄はPBRが高い傾向にあり、今後も大きく株価が上昇していく可能性も秘めていることになるため、注意する必要があります。
移動平均乖離率が高い
株価が移動平均線からどれくらい離れているかをパーセンテージ(%)で表したものが移動平均乖離率です。
移動平均乖離率は、株価が移動平均線から大きく上に離れると大きくプラスに変動し、買われすぎで売りサインと判断することができるようになります。
これは、株価が移動平均線からある程度離れると、やがて移動平均腺に近付いていく傾向があることに基づいています。
一般的に25日移動平均線が使われることが多く、スクリーニングの際は10%以上の数値を指定するといいでしょう。
移動平均線がデッドクロス
短期の移動線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けることをデッドクロスと呼びます。
デッドクロスはこれから株価が下落基調に転換するサインとして、売りシグナルを見極める判断材料の一つとして活用できます。そのため空売り銘柄を探すのに有効です。デッドクロスしている銘柄はスクリーニングで検索することが可能です。
RSIが高い
RSIは、市場の「買われすぎ」か「売られすぎ」かを判断するのに役立つオシレーター系テクニカル分析指標の一つです。
数値はパーセンテージ(%)で表され、一般的に70~80%以上で買われすぎと判断されます。
買われすぎというのは、株価が高値圏にあり、今後株価が下落に転じる可能性が高いと判断し、売りサインと捉えることができます。
もちろん買われすぎだからといってすぐに株価が下落していくとは限りませんが、空売り候補の銘柄を探す際に有効です。
時価総額が大きい
時価総額が小さい銘柄は何か好材料が出た際に株価が急騰する可能性が高いです。また出来高が少ないケースも多く、買い注文が少し集中するだけで株価が上昇してしまい踏み上げリスクも大きいです。
時価総額が100億円未満の企業は空売りをするには小さいと言えます。そのため、スクリーニングをする際は100億円以上の数値を指定するといいでしょう。
スクリーニング後はチャートもチェック
スクリーニングで銘柄を絞り込むことができたら、株価チャートもチェックするようにしましょう。
下記で紹介するような株価が下落しやすいチャートの銘柄を選ぶことで、より勝率を上げることができます。
下落トレンドに入っている
下落トレンドの波に乗ることが出来れば空売りで利益を狙うことができるため、下落トレンドに入っている銘柄を空売りするのがいいでしょう。
下落トレンドかどうかの判断は、移動平均線を活用します。移動平均線が右肩下がりなら下落トレンドと判断することができます。
移動平均線は主に短期線、中期線、長期線の3種類があり、日足であればそれぞれ、5日、25日、75日の移動平均線がよく使われます。
短期の値動きを把握したい時は短期線、中・長期のトレンドを把握したいなら中・長期線を確認します。
また、短期、中期、長期移動平均線の3本とも右肩下がりになっている場合は、強い下落トレンドを示していると言えます。
ただし注意点として、下落トレンドでも株価が急落して移動平均線から大きく下に乖離している場合は、反発して株価が上昇するリスクが高いので避けた方が無難です。
上昇トレンドが崩れている
ある程度続いた上昇トレンドが崩れている場合、空売りが有効です。
上昇トレンドが一旦崩れると、株価が上昇に転じる局面があっても上昇は限定的で、その後は下落トレンドに突入し、本格的に下落が始まる可能性が高くなります。
上昇トレンドの崩れを狙った空売りを行うタイミングは、株価(ローソク足)が25日移動平均線や75日移動平均線を割り込んだタイミングを狙うのが一般的です。このタイミングで長期保有していた多くの投資家が利食い売りを行い、そのまま売りが重なって株価が下落していく可能性が高いためです。
ダブルトップを形成している
ダブルトップとは、相場の天井を示すチャートパターンであり、アルファベットの「M」のようなチャートの形をしています。
株価が大きく上昇した後に反転して一旦下落し、その後株価が再上昇し、前回と同じ高値付近で上昇が止まり、再び下落に転じていく状況のことを言います。
これは相場の天井を示しており、下落トレンドへ転換する可能性が高いと考えられます。
このダブルトップが発生した際に、前回下落時の安値(ネックライン)を下回るようになると下落トレンドへ転換したと判断することができ、空売りサインの目安となります。
スクリーニング機能が充実した証券会社
スクリーニング機能が充実した証券会社を紹介します。
auカブコム証券
auカブコム証券のスクリーニング機能は、スクリーニングの種類が豊富で、財務・コンセンサス・テクニカル・信用残など様々な条件から検索することが可能です。ゴールデンクロスなどのテクニカルが発生している銘柄や、チャート形状での検索も可能です。
自社アナリストがおすすめする簡単検索条件機能も用意されているので、どんな条件で検索していいのか分からないといった初心者にもおすすめです。
検索結果はチャートや財務、ニュース等をグラフィカルに表示し、分かりやすさや見やすさにもこだわっているのも特徴です。
初心者向けの基礎的な条件から、上級者向けのマニアックな条件まで幅広く網羅しています。
楽天証券
楽天証券のスクリーニング機能も、スクリーニング条件の種類が豊富です。他社ではあまり見かけない楽天証券独自の条件もあるなど、非情に充実しています。
「割安銘柄」「財務健全 低PBR」「成長・有望株」など、楽天証券おすすめのスクリーニング条件が用意されているので、初心者でも簡単にスクリーニングすることが可能です。
検索結果は、「株価チャート」「業績・予想」「企業動向」などを一覧で閲覧でき、非情に見やすくて使いやすくなっています。
マネックス証券
マネックス証券は、ファンダメンタルズ特化型とも言えるほど、ファンダメンタル分析の条件が豊富なスクリーニングツールとなっています。
「業績実績」「業績予想」「スコア」「アナリスト評価」など特徴的な条件から検索することが可能で、ファンダメンタル分析を重視したい方におすすめです。
まとめ
空売り候補銘柄を見つけるためのスクリーニング条件を解説しました。各証券会社などが提供するスクリーニング機能を活用して、空売りに適した銘柄を見極めるようにしましょう。
買い注文からでは、相場の上昇局面でしか利益を出すことができませんが、空売りをすることで相場の下落局面でも利益を狙うことが可能になるため、トレードの幅が広がります。
ただし空売りは、予想に反して相場が上昇してしまうと損失が発生してしまうので注意が必要です。株価の上昇には天井が存在しないため、膨大な損失を生み出す可能性があることを忘れてはいけません。損切りラインを決めておくなどのリスク管理を徹底するようにしましょう。
空売りをするには通常の取引口座とは別に、信用取引口座を開設する必要があります。また、信用取引口座であっても、全ての銘柄で空売りができるわけではないので注意が必要です。
空売りが可能なのは、証券取引所が取り決めた貸借銘柄や、各証券会社が取り扱いを決めた銘柄のみとなります。空売りが可能かどうかは各証券会社の銘柄詳細ページ等にて確認することができますので、取引をする前に確認しましょう。
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